福島原発事故はいまだ収束せず、放射能汚染水が垂れ流され続けています。事故原因も検証できていません。安倍首相は「世界最高水準の規制基準」と言いますが、規制当局トップの田中俊一原子力規制委員会委員長は「基準の適合性は見ているが、安全だということは申し上げない」と繰り返して言ってきました。事故を大前提としているのです。玄海原発が大事故を起こせば、被害は甚大なものとなり、佐賀のみならず日本全国に及び、国をも滅ぼしかねません。
昨年11月9日、原子力規制委員会が佐賀県にある九州電力玄海原発3・4号機の再稼働について、事実上の合格証である審査書案を了承しました。原発は停止していても電力は足りており、国民・住民の再稼働反対の声は広がっています。安倍晋三政権は規制委の審査を口実に原発の再稼働を急いでいますが、安全無視の再稼働は、やめるべきです。
昨年4月には震度7が連続して襲う熊本地震が発生しました。今や、日本はどこで大地震が起きてもおかしくない状況です。佐賀県地域防災計画においても、「佐賀平野北縁断層帯」で最大震度7の地震が発生し、最悪で死者4300人という想定がされています。原発事故が大地震との複合災害になったら、放射能から安全に避難することも屋内にとどまることも極めて困難となります。
原発の近くで連続大地震が発生すれば耐震安全性が直ちに問題になります。繰り返しの力による金属疲労は震動回数に比例して増加し、ついに許容限度に達して破壊に至りますが、一回の大地震が来ただけでほとんど許容限度に達してしまいかねません。原子力規制庁は原子力施設について二度目の揺れがきたときの評価・検討がされていないことを認めています。全国すべての原発について、これらの検証と対策さえもない中での再稼働は許されません。
島崎邦彦・元原子力規制委員長代理は、これまでの基準地震動(想定する地震の最大の揺れ)が過小評価だとの警告を発しました。規制委員会は別の計算式でやりなおしましたが、地震動が大きくなることが分かると、 やり直し結果自体をなかったことにしようとしました。玄海原発の基準地震動の評価をやり直すべきです。
玄海原発で事故が起きたら、放射能は風に乗って四方八方にまき散らされます。たとえば、西風が吹いたら基山・鳥栖方面へ、北西風なら小城から佐賀方面へ、北風なら伊万里から太良方面へというように、どこへどう飛んでいくか分かりません。こうした中、原発事故時の避難計画は「30キロ圏」でしかつくられていません。避難先は一人あたり2㎡のスペースで人口1万人の太良町に伊万里市の住民8千人が避難してくるような机上の数合わせ。逃げる方向は1つだけ。放射能被害の拡散を防ぐために 徹底しなければいけない放射能汚染検査(スクリーニング)は高い汚染基準の上、代表者のみでよしとする手抜き検査。このように問題だらけで、被ばくを前提とした机上の計画となっているのです。
原子力災害避難訓練では佐賀県の30キロ圏人口19万人のうち避難訓練参加者はわずか0.3%の639人でした。参加した住民からは「すべて予定どおりに訓練をやっているだけでは意味がない」「集合場所にわざわざ集まるか?バスはちゃんと来るのか」「原発にわざわざ近づくような道は通らない」「避難の経路を知らなかった」「病気で足が思うように動かない。死んだ方がましたい」などの声も出ています。また、屋外は放射能が飛び交っているという状況の中を、ドアは開けっぱなしで、職員も住民も防護服もマスクもつけずにいたりするなど、「放射能からの避難」ということが非常に軽視されている訓練でした。自然災害と違うのです。このような実効性のない避難計画では、私たちの命は守ることができません。
九電や国は「避難計画を支援します」と言いますが、そもそも原発事故の加害者は電力会社であり原発推進の国です。しかし、避難計画は地方自治体に押しつけられています。 以上述べたように数々の問題点をクリアできないまま、玄海原発が再稼働されようとしています。北九州地区労連は2011年3月11日の悲劇を二度と繰り返さないために、以下のように要請します。
- 玄海原発の再稼働申請を取り下げ、再稼働計画を中止すること。
- 川内原発1号機についても運転を停止すること。