貴社におかれましては、従業員の雇用と生活の安定に尽力されていることと存じます。
さて、世界的な経済危機の発生から2年余り、公的資金の援助を受けた一部製造業大企業での「V字回復」は顕著ですが、多くの中小零細企業や国内型産業では厳しい経営状況が続いています。
全国労働組合総連合(全労連)は、行き過ぎた外需依存を改め、力強い内需の喚起を求めています。内需拡大には、雇用の安定と賃金改善、中小企業経営の維持が必要との立場で、春闘に取り組んでいます。
日本はこの10数年、主要先進国の中で唯一、経済が成長せず「デフレの罠」にはまっています。同じ時期、労働者の賃金は低下し、非正規労働者が増加し続けました。その結果、労働者の4人に1人が年収200万円以下という状況です。これでは消費は拡大せず、青年は自立した生活を営むことができません。賃下げと低賃金労働の増加は消費を縮小させ、それが価格低下を引き起こして中小企業の経営を圧迫し、さらに賃金抑制と雇用の不安定化を招いています。この悪循環こそ、今の日本社会の閉塞状況の元凶です。
一方で、資本金10億円以上の大企業は、2009年の1年間だけで、内部留保を233兆円から244兆円に11兆円も積み増ししています。大企業の巨額な内部留保は、賃下げ、首きり「合理化」、非正規雇用への置き換え、そして下請け企業への買い叩きなどによって積み上げたものです。悪循環を断ち切るためには、「カネ余り」の大企業に応分の負担を迫ることが必要です。
民主党政権には、大企業の社会的責任の履行を迫る役割が求められましたが、期待は裏切られています。2011年に政権が重視するとしている政策は、一部の大企業にしか効果が及ばない法人税減税と、庶民に痛みの消費税率引き上げです。前回の消費税増税は景気回復の芽をつんだ愚作でしたが、それを繰り返そうとしています。農林漁業と地域経済、中小企業経営、雇用への悪影響が強く懸念されるTPP(環太平洋戦略的経済協力協定)への参加や、後期高齢者医療制度廃止をすり替える医療制度改悪も打ち出しています。いずれも、国際競争力強化といいながら、一部の多国籍企業の利益の最大化のために日本の国民経済・国内市場・地域社会・国民生活を犠牲にする施策です。地域密着型の産業はさらに苦境に追い込まれ、内需はさらに冷え込み、景気後退の泥沼から逃れられなくなります。
貴社と全労連には、経営者と労働組合という立場の違いはあるものの、内需拡大による景気回復をめざし、中小企業経営と労働者の生活安定をめざすことでは共通しているものと思います。 本「統一要請書」の趣旨を積極的に受け止めていただき、下記事項に積極的な対応をいただきますよう要請いたします。
- 職場で働く労働者の雇用を守るとともに、就業困難な状況にある青年労働者や、安定雇用を望むパートや派遣・請負などの有期契約労働者に、正規採用での雇用機会を増やしてください。
- 非正規社員や派遣労働者も含め、貴社に働く労働者の雇用安定に最大限努力いただくこと。
- 貴社に働くすべての労働者を対象に、「時間額・日額・月額」での「企業内最低賃金協定」を締結いただくこと。協定の水準は時給換算で「1,000円以上」としていただくこと。
- 「全国一律・時給1,000円以上」の最低賃金と、公契約法・公契約条例の制定、中小企業振興策の拡充を求める労働組合の取り組みにご協力いただくこと。
- 非正規労働者の労働条件を大幅に改善し、正規社員化を進め、非正規労働者と正規労働者との均等待遇、男女の処遇格差の是正に積極的に取り組んでいただくこと。
- 改正育児介護休業制度への積極的な対応、次世代育成支援対策推進法に基づく計画策定など、子育てしながら働き続けるための条件整備を進めていただくこと。
- 所定外労働時間の削減や休日・休暇の完全取得、所定労働時間の短縮など、労働時間短縮を進めるとともに、雇用を増やしていただくこと。
- コンプライアンスに則り雇用調整助成金の不正受給の再発防止に努めること