貴団体におかれましては、産業の発展、働く者の雇用とくらしの安定に尽力されていることと存じます。
さて、日本経済を不況から脱却させ、経済の好循環を実現するには、内需重視の景気対策が必要であり、賃金の引き上げが必要であることは、国だけでなく国際的にも共通認識となっています。しかし、政府による金融緩和や財政出動、経済団体への「賃金引上げ」要請にもかかわらず、賃金の改善は進まず、逆に非正規雇用労働者が2000万人を超えるまで拡大し、低賃金労働者の増加と消費税増税や物価上昇が実質賃金の低下に拍車をかけています。賃上げが実現しないため、消費支出の減少が続き、地域経済を疲弊させ、消費税の増税分を転嫁できない中小企業は相次いで経営困難に陥っています。アベノミクスによって大企業のグローバル化がすすんでも、個人消費・内需への影響は限定的で、賃金の改善は進んでいません。さらに非正規雇用労働者が全労働者の40%に達するなど、低賃金労働者の増加と格差が深刻化しています。一方で大企業の内部留保は増え続け、313兆円にも達しました。
さらに安倍首相は、「働き方改革」を「1億総活躍社会に向けた、最大のチャレンジ課題」と位置づけて、労働者のためであるかのように装いながら、大企業や人材ビジネスが欲しがる制度の実現と搾取の強化をねらい、労働者保護制度の解体をねらっています。政府は97兆4547億円の2017年度予算案を編成していますが、消費税増税を先送りしたツケを労働者・国民と中小企業へ押し付け、軍事費拡大と大企業負担を軽減する中身が目白押しです。多国籍化する輸出大企業を優先する行政を転換し、社会保障の拡充と税による所得の再配分機能と中小企業への支援・振興策を強化し、労働者の賃金引き上げと雇用の安定が緊急に必要です。そのために必要な財源は、「カネ余り」の大企業に応分の負担を担わせることなどで確保すべきです。消費税の再増税、社会保障の改悪と負担増、労働法制の改悪をやめ、働く者が安心して働き続けられる社会が求められます。
貴団体と全労連には、経営者団体と労働組合という立場の違いはありますが、日本経済の持続的発展、地域経済・中小企業の活性化、労働者の生活安定を願う思いには共通するものがあると考えます。つきましては、下記の要請事項を積極的に受けとめた対応をいただきますよう申し入れます。
- 貴団体加盟の企業に、労働者の雇用維持と新規雇用拡大、新卒者採用の努力を要請していただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、内需拡大のために賃金引き上げを積極的に行うよう要請いただくこと。各企業で働くすべての労働者の賃金を「時給1,000円以上」とするよう要請していただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、不払い残業や「名ばかり管理職」、非正規切り、不当解雇などの違法、脱法の根絶を要請いただくこと。長時間労働の解消と有休休暇完全消化の取り組みを強めていただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、子育てしながら働き続けるための条件整備や高齢者雇用に積極的に取り組むよう要請していただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、非正規雇用労働者の正規雇用への積極的な転換を要請していただくこと。
- 行政に対し、公的就労の場の確保、公契約法制定を働きかけていただくこと。
- 消費税増税に反対し、原発依存のエネルギー政策の転換を求める私たちの運動との共同をご検討いただくこと。
- 全国一律最低賃金制の制定を行政に対して意見具申をしていただくこと。
- 北九州におけるすべての争議の早期解決を図るべく、各関係機関、当該事業主等に指導をしていただくこと。