貴団体におかれましては、産業の発展、働く者の雇用とくらしの安定に尽力されていることと存じます。
さて、日本経済を消費不況から脱却させ、経済の好循環を持続させるには、内需重視の景気対策と賃金の引き上げが必要であることは、国だけでなく国際的にも共通認識となっています。しかし、政府による金融緩和や膨大な財政出動、経済団体への「賃金引上げ」要請にもかかわらず、賃金の改善は進んでいません、逆に非正規雇用労働者が2000万人にまで拡大し、低賃金労働者の増加と消費税増税や物価上昇が実質賃金の低下に拍車をかけています。賃上げが実現しないため、消費支出の減少が続き、地域経済が疲弊し、消費税の増税分を転嫁できない中小企業は相次いで経営困難に陥っています。
アベノミクスによって大企業のグローバル化がすすんでも、個人消費・内需への影響は限定的で、賃金の改善は進んでいません。その一方で大企業の内部留保は増え続け、449兆円にも達しました。さらに安倍首相は、「働き方改革」を「1億総活躍社会に向けた、最大のチャレンジ課題」と位置づけて、労働者のためであるかのように装いながら、「生産性の向上」を合言葉に、大企業や人材ビジネスが欲しがる制度の実現と搾取の強化をねらい、過労死ラインの法的な容認など、労働者保護制度の解体を強行しました。
政府は、消費税増税を2019年10月に断行し、さらに憲法を変え、戦争する国づくりへ邁進し、武器輸出で更なる利益の確保を狙い、軍事費拡大と大企業負担の軽減を推進しています。多国籍化する輸出大企業を優先する行政を転換し、社会保障の拡充と税による所得の再配分機能を強め、中小企業への支援・振興策を強化し、労働者の賃金引き上げと雇用の安定による国内消費の向上が緊急に必要です。そのために必要となる財源は、「カネ余り」の大企業に応分の負担を担わせることなどで確保すべきです。消費税の再増税、社会保障の改悪と負担増、労働法制の改悪をやめ、働く者が安心して働き続けられる社会の確立を求めます。
貴団体と全労連には、経営者団体と労働組合という立場の違いはありますが、日本経済の持続的発展、地域経済・中小企業の活性化、労働者の生活安定を願う思いには共通するものがあると考えます。 つきましては、下記の要請事項を積極的に受けとめた対応をいただきますよう申し入れます。
- 貴団体加盟の企業に、労働者の雇用維持と新規雇用拡大、新卒者採用の努力を要請いただき、「尊厳ある労働」(ディーセントワーク)の実現に向けて尽力されるようご指導いただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、内需拡大のために賃金引き上げを積極的に行うよう要請いただくこと。各企業で働くすべての労働者の賃金を「時給1,000円以上」とするよう指導いただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、不払い残業や「名ばかり管理職」、非正規切り、不当解雇などの違法、脱法の根絶を要請いただくこと。長時間労働の解消と有休休暇完全消化の取り組みを強めていただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、子育てしながら働き続けるための条件整備や高齢者雇用に積極的に取り組むよう指導いただくこと。
- 貴団体加盟の企業に、非正規雇用労働者の正規雇用への積極的な転換を要請いただくこと。
- 政府に対し、公的就労の場の確保、公契約法制定を働きかけていただくこと。
- 消費税を減税し、原発依存のエネルギー政策の転換を求める私たちの運動との共同をご検討いただくこと。